「……紗友」

 美由紀との最後の会話を思い出す。

 何を幸せと思うかは、その人にしか決められない。

 紗友の幸せは、紗友が決めるもの――。

「俺はお前に幸せになってほしいと思ってる。誰よりも幸せな人生を歩んでほしいって。俺のそばにいたら、苦労する未来しか訪れない。……俺には、お前を幸せにしてやることができそうにないんだ」

 ずっと、そう思っていた。

 そう思うことで、紗友の想いから逃げ続けていた。

 でも――もう、逃げない。
 
「それでも俺は、お前に頼ってもいいのか?」