知子が先に教室へ戻り、屋上には詠斗と紗友の二人きり。
 詠斗の元へ歩みより、紗友は遠く空を見上げた。

「すごいなぁ、美由紀先輩は」

 そう言った紗友の瞳には尊敬の色が宿っている。

「美由紀先輩の一言で、たくさんの人の心が動くんだもん。どうしたらあんな素敵な人になれるのかなー?」

 心からの思いを口にしていることは一目瞭然。詠斗はふっと笑みをこぼした。

「純粋に、素直だからだろうな」

 え? と紗友は詠斗を見やる。改めて、詠斗は紗友とまっすぐ向き合った。