「美由紀先輩、昨日天国へ旅立って行きましたよ。さわやかイケメンを捕まえて幸せになるんだそうです」

「何それ、美由紀がそう言ったの?」

「はい。あと、可愛いネコも飼いたいらしいです」

「ははっ、美由紀らしいな。あの子、モフモフした小さい動物が大好きだから」

 モルモットとかね、と知子は笑う。モルモットとなんて一体どこで触れあうのだろう。頻繁に動物園にでも行っていたのだろうか。

「吉澤くん、だっけ?」

 知子に問われ、「はい」と詠斗は返事をする。

「ありがとうね。耳……大変だろうけど、何か困ったらいつでも声かけてよ。美由紀の代わりじゃないけど、あたしで良ければ力になるからさ」

 思いがけない一言に一瞬驚いたが、すぐに「ありがとうございます」と答えた。社交辞令でなく、心からの感謝を込めて。

 知子の隣で紗友が柔らかく笑っている姿が目に入って、詠斗は少し恥ずかしい気持ちになったのだった。