殺されておきながら、なお親友のことを案ずる美由紀。今はもう、その想いを伝えられるのは詠斗しかいない。だからこそ、詠斗はこうして知子の前に立ったのだ。

「美由紀先輩、本当にあなたのことを大切に思っていたんだと感じました。あなたが部長として作り上げてきた大切なバレー部と、あなたの未来とを天秤にかけて、美由紀先輩なりに考えてあなたの試合出場に待ったをかけたんだと思います。俺が聴いたかぎり、美由紀先輩があなたを想う気持ちに嘘はなかった。俺の言葉じゃ伝わらないかもしれないけど、美由紀先輩はいつも……いえ、今でもあなたのことを一番に想っているはずです」

 言い終える前に、知子の瞳から涙がこぼれ落ちていた。

 知子もまた、美由紀のことを大切な人だと思っているのだろう。絶たれるはずのなかった未来を絶たれたのは美由紀だけではない。知子にとっても、美由紀と歩んでいける未来を失ってしまったのだ。悲しみに暮れるのも無理はない。

「あなたの思うままにするのがいいんだと思います」

 少し間をあけてから、詠斗はそう付け加えた。