今日はいい天気ですね、くらいのテンションで言ったつもりだったのだが、美由紀から言葉が返ってくるまでに軽く十秒はかかった。

『そう、なんですね』

 相手の姿が見えないのでいなくなってしまったかと思ったが、どうやら詠斗の告白に驚いて言葉を失っていたようだ。「そうなんです」と答えると、また少し間があいた。

『だから、私の声が聴こえるんでしょうか?』
「あぁ、そういうことなら納得できなくもないです。俺の耳には、あなたの声以外の音は何も届かないままのようなので」

『霊感の強い方あたりに気付いてほしくてずっと呼び続けていたのですけれど、まさかあなたのような耳の不自由な方に届くとは思いませんでした』
「すみません、俺に少しでも霊感があればあなたの姿が見えたんでしょうけど」

『いえ、十分です。この声を聞き届けてもらえるだけで、願いはほぼ叶ったようなものですから』