『またきっと、ふらりとどこかで会えますよ。いつか誰かが言っていました――別れは出会いの始まりなんだって』

 美由紀の姿が、どんどん薄くなっていく。きらめいた残光が、美由紀の笑顔をより一層輝かせる。

『強い人になってください。次に会った時に私ががっかりするようなことのないように』

 約束ですよ? と美由紀は右手の小指を立てた。泣きながら、詠斗は力強く頷いた。

『あなたと出会えて良かった』

 その言葉を最後に、美由紀の姿は見えなくなった。

 すっと通り抜ける春の風が、詠斗の髪を静かに揺らす。

「……俺もです、美由紀先輩」

 誰もいない空を見上げてそう言った詠斗の声は、美由紀の耳に届いただろうか。

 突き抜ける青が、そっと微笑みかけてくれたような気がした。