『幸せになってください』

 美由紀は優しくそう言った。顔を上げれば、今までで最高の笑顔を浮かべる美由紀の姿がそこにあって。

『私も天国で幸せになります。さわやかイケメンを捕まえて』

 ふふ、と楽しそうに笑う美由紀。『あ、可愛いネコも飼いたいですね』と、また一段としまりのないことを口にしている。

 ごしごし、と詠斗は乱暴に目もとを拭った。最後くらい、ちゃんと笑っていなくちゃいけない。

「……もっと早く」

 それなのに、また涙が溢れてきて。

「もっと早く、先輩に出会いたかった」

 これでお別れなんて、どうして受け入れることができるだろう。