『我慢しなくていいんです。泣いていいんです。怖くて当たり前なんです。……あなたは、ひとりじゃありません』

 温かい。

 こんなにも温かい場所にいられるのは、どれくらいぶりのことだろう。

「ぅわあああ、ぁあああ―――……ッ!!」

 もう、止めることなどできなかった。

 何年分の涙が、今流れているのだろう。

『あなたには、あなたの想いを受け止めてくれる人がそばにいます。あなたに寄り添われることを待っている人がいます。……あなたには、帰る場所があるんです』

 美由紀の声と、美由紀の言葉と、美由紀の胸のすべてを借りて、詠斗はしばらくの間泣き続けた。

 五分か、十分か――。気の済むまで泣いた頃には、随分と時間が経ってしまっていた。