この痛みは誰にもわかってもらえない。だから心に閉じ込めてきた。

 でも本当は、わかってもらいたかったんだ。誰かに受け止めてほしかった。

 ひとりでいれば自分が傷つかないなんて嘘だ。

 この心はいつだって、とてもとても、痛かったんだ――。

『――詠斗さん』

 その時。

 ふわり、と美由紀の体が詠斗を包んだ。

 さっきと同じで、抱き寄せられるような感覚はない。それでも、美由紀のぬくもりを感じることはできる。

『つらかったですね』

 耳元で聴こえる美由紀の声。優しい吐息まで、そのすべてがこの耳を通じて伝わってきた。