「……怖い」

 でも、違う。

「怖いよ、俺…………!」

 本当は、ものすごく怖かった。

 誰の声も、何の音も届かないこの耳で生活することは、真っ暗な鉄の檻に閉じ込められているようで。

「ぅわああああぁ――――ッ!!」

 詠斗は泣いた。
 声を上げて。

「もうイヤだ! こんな生活、もうたくさんだ!! なんで俺だけ!? どうして俺には何の音も聴こえないんだ!!……怖いよ、ずっと怖かったんだよ!! 何にも聴こえなくて、いつもひとりぼっちで……ほんとは……本当は……ッ!」