「……美由紀、先輩……?」

 そこにいたのは、紛れもなく美由紀だった。

 ふわりと宙に浮いていて、きらきら輝く綺麗な微笑みを湛えている。

『もっと、聴かせてください』

「えっ……?」

『あなたの声を――あなたが心の中に閉じ込めている、本当の声を』

 つやのある長い黒髪が揺れる。

 本当なら自分よりいくらも小さいはずなのだろうけれど、浮かんでいるからまっすぐに目が合う。

『あなたが私の声を求めるように、私もあなたの声が聴きたい。あなたの心を、秘めている声を聴かせてください』

 詠斗は息を飲み込んだ。

 見つめられれば見つめられるほど、言葉が出てこなくなる。