「待ってよ」

 わかっているのに、溢れだす想いを止められない。

 お願い。

 行かないで。

 ひとりにしないで。

「いやだよ、俺……!」

 先輩の声が、聴こえなくなるなんて――。

『詠斗さん』

 はっ、と詠斗は顔を上げた。

 そして、目の前に広がる光景に息を飲み込んだ。