「殺された……?」

 俄かには信じられない言葉が飛び出したが、それよりも重く受け止めなければならない事態が目の前に転がっている。

 羽場美由紀と名乗るその声は、この世に生きる人間のものではない。
 つまり――死者の声であるということ。

『はい。塾帰りのことでしたが、誰かに後ろから頭を殴られて……。その後、事故死に見せかけようとしたのか、自宅近くのマンションと公園の間にある長い階段の上から放り投げられたようで』

 その時のことは覚えていませんが、と美由紀の声は付け加える。

「ちょ、ちょっと待ってください。一旦状況を整理させてほしいんですけど」

 あまりにも淡々と自らの死に際について語ってくる美由紀に対し、詠斗は片手を挙げてストップをかけた。