「先輩……」
『さて、詠斗さん』

 詠斗が言いかけるのを遮り、美由紀は詠斗の名を口にした。

『先日の問いの答えは見つかりましたか?』

 う、と詠斗は言葉を詰まらせる。

 これこそが、詠斗にとって一番に考えるべき問題だ。――何故自分は、美由紀のことを強い人だと思うのか。

 時間を見つけては何度も考えてみたけれど、美由紀の求めていそうな答えはついに見つけられなかった。考えれば考えるほど美由紀のことを強い人間だと思った自分のことがわからなくなって、すっかり袋小路に入り込んでしまっていた。

『あらあら、困りましたね』

 黙ったまま突っ立っていると、美由紀が苦笑を浮かべるような声で言った。

『あなたの答えを聞いてから旅立とうと思っていたのに。これでは気持ちよく天国へ行けないじゃないですか』