『「相談してくれりゃよかったのに」』

 そう美由紀が通訳したのは巧の声だ。詠斗のすぐ隣まで歩み寄り、神宮司を見つめている。

「まぁ、オレごときに現状を変えられるようなデカい力はねぇけどよ。それでも話してくれてりゃ、今よりはずっとましな未来になってたと思うぞ?」

 同感だ、と詠斗は思った。おそらく、この場にいる誰もがそう思っているだろう。

「やっぱ、殺しはダメだ。殺す勇気が持てるくらいなら、誰かに話すことだってできたはずだろ? それこそ、草間も一緒に。踏み出す一歩を間違えたんだよ、お前達は」

 強く握られている神宮司の左手は小刻みに震えている。俯き、唇を噛み、必死に涙を堪えているように見えた。