『ねぇ』

 華絵と別れ、ひとり本屋から少し北に入った裏路地で泣いていると、背後から唐突にそう声を掛けられた。

『……?!』

 ハッと息をのんで振り返ると、同じ高校の制服をまとった男子生徒が立っていた。

『……あ、の……っ』
『ごめん――見ちゃった、君が本を盗むところ』

 ガン、と頭を殴られたかのような感覚に襲われる。

 終わった――。

 そう、千佳は思った。

 これで私の人生はおしまいだ。万引きのことが学校にバレたら、親にバレたら――。

 一瞬にして頭の中が真っ白になり、止まりかけていた涙が再び河になって流れ始めた。