「はったりだ! いくら灯りのある場所だからって、顔が見えたなんて嘘に決まってる!」

 想定通りの切り返し。詠斗はフッと笑みを零した。

「そうやいやい言うなよ。俺は何も、目撃したのが顔だけだとは言ってない」

「は?!」

「目撃者はこうも言っていた――その人物は、右の手首に腕時計をしていたって」

 はっ、と神宮司は咄嗟に左手で右の手首を覆い隠した。もはや自白したも同然の行動だ。

「頼むよ、神宮司。もう認めてくれないか?」

 ギリ、と神宮司は歯噛みした。じっと黙り込んだまま、拳を握りしめている。