あっち、と詠斗が指を差したのは神宮司達の後方で、神宮司だけでなく草間千佳もそっと後ろを振り返った。

「一人目の殺人でそこまで作為的な行動を取っていたのに、二人目、三人目と事を重ねていくたびに作為が薄れていくというのはちょっと考えられないなと思った。じゃあ、どうして一人目の美由紀先輩にだけそんな小細工を施したのか。その理由は、美由紀先輩殺害がもともと計画になかったものだったから。殺してしまってから人違いだと気づいて、お前はかなり焦ったはずだ。予定していない殺人からうっかり足がついてしまってはまずいとでも思ったんだろう。だからお前は美由紀先輩の遺体を担いで走り、階段の上から放り投げた……頭部の打撲痕を階段から落ちた時に受けた損傷だと見せかけるために」

 神宮司は口を挟むことなく詠斗を睨み付けるだけ。ちなみに、と詠斗は続ける。

「お前の目撃証言が上がったのはその偽装工作のせいだよ」

「……何?」