『……そういうことだったんですね』

 細く、か弱い美由紀の声がそっと詠斗の耳に降り注ぐ。
 今この瞬間、初めて自らの事件の真実を知った美由紀。どんな顔をしているか、想像することすらはばかられる。

『そういえば私、昔から華ちゃんとはよく間違われていました。特に後ろ姿はそっくりなようで、似たような服を着て姉妹だと嘘をついて、道行く知らないおばさん達を騙して遊んだこともありましたねー』

 懐かしいことを思い出しました、と美由紀はまるで縁側でお茶を飲みながら話しているようなほのぼのとした空気を漂わせながらそう言った。

 違うだろう、ここはもっと神妙な声で『信じられません……そんな理由だったなんて』というような心底落ち込んだセリフを言う場面だ。どうして先輩はいつもこうなんだと、やはり詠斗は頭を抱えてしまうのだった。