二人が選んだ、いわゆる『交換殺人』という手法。

 確かに捜査の撹乱という観点において有効な手段の一つではあるが、この方法を用いる最大のメリットは被害者と加害者との間にまるで接点がないということだ。

 ネット社会と言われる現代において、不特定多数の中から条件に合致する人と手を組み交換殺人を成立させようと目論むなら成功率も上がりそうだが、今回は同じ高校の関係者の中ですべての事件が起こっている。たとえ被害者同士や容疑者同士に接点が見つからなくとも、交換殺人を疑う余地は十分すぎるほどある状況だ。うまい手を使ったとはおよそ言えそうにない。

「実際、神宮司に関しては仲田翼殺害時に完璧なアリバイがある。草間さんについてもそうなんだよな? 兄貴」

「兄貴?」

 と神宮司は眉をひそめて後ろを振り返った。黙って話に耳を傾けていた傑は、詠斗に応えるように口を開いた。