「自分から話す気はない、ということでいいんだな?」

「話すも何も、僕にはやましいことなんて何もないからね」

 使う言葉には自信を滲ませているものの、その頬には一筋の汗が伝っている。虚勢を張ってどうにかこの場を取り繕うつもりか。

 これでは埒が明かない。兄に目を向けると、一つ頷きが返ってくる。
 仕方がないとばかりに詠斗は小さく息をつき、ゆっくりと語り始めた。

「今回起きた一連の事件の目的は、仲田翼先輩と猪狩華絵さんを殺すことにあったんだ」

 二つの名前が出た瞬間、神宮司も草間千佳もぴくりと眉を動かした。

「神宮司は仲田先輩から恐喝の被害に遭い、草間さんは猪狩さんからいじめのような仕打ちを受けていた。あんた達二人がどこで互いのことを知ったのかはわからないけど、どちらかが言い出したんだろうな……仲田先輩と猪狩華絵さえいなくなれば、自分達は救われるんだって」