「待たせたな、詠斗」

 後ろをついて歩いてきた二人の背中にそれぞれ手を回して自分の前に立たせながら、傑は爽やかな笑みを浮かべてそう言った。

「いや、俺達も今来たとこだから」
「そうか」

 神宮司隆裕、そして草間千佳はそれぞれ目を合わすこともなく、不安げな面持ちで佇んでいる。

『――あの方です』

 不意に、美由紀の声が聴こえてきた。

『間違いありません。私があの時振り返って見たのは、そこに立っている男の子でした』