あの日から、もうすぐ三年が経とうとしている。
ある夏の朝。目が覚めると、何の音も聴こえなくなっていた。
あの時のことは、今でもはっきりと覚えている。確かにショックだったけれど、あぁ、ついにこの日が来たか、と妙に冷静な自分がいたことのほうがショックだった。生まれついての病で治ることはないのだと、諦めが良すぎた自分の心に何よりの悲しみを覚えてしまったのだ。
そんな中、誰よりも泣いてくれたのが紗友だった。
一粒の涙も流さなかった詠斗の分も、紗友が代わりに流してくれた。
それだけで、十分だった。
これ以上、紗友に求めることなど何もない。今でもそう思っている。
「男としてどうかと思われても、俺には痛くもかゆくもない」
本当に痛みを覚えるのは、未来ある紗友の人生を壊してしまうことだから。