「ごめん、心配かけるつもりじゃなかった。一人で大丈夫だから」
「ほんと?」
「ほんと」

 もう一度「大丈夫」と口にして、詠斗は紗友に笑みを向けた。完全には納得していない様子の紗友だったが、最終的には詠斗の意向に沿い、詠斗に見送られながら自宅へと帰っていった。


   *


 紗友を家まで送り届けたその足で、詠斗は再び電車に乗り、美由紀の殺害現場へと向かった。到着する頃には西の空が真っ赤に染まり、日暮れまであまり時間がないことを告げていた。