「兄貴、これって……?」
「あぁ。それが真実だとしたら、羽場美由紀の事件が事故に見せかけられた理由にも一応の説明がつくな」
「いや、でも……」

 言葉を失い、詠斗は兄から視線を外して俯いた。

 もしも今頭に浮かんでいることが真実なら、これほどまでに信じたくないものはない。こんな真実のために奔走してきたのかと思うと、やりきれない気持ちでいっぱいになった。

「……なぁ、兄貴」

 そっと顔を上げ、詠斗はまっすぐに兄の目を見る。

「一つだけ、わがままを聞いてもらいたいんだけど」

 これが真実なのだとしたら、受け止める以外に選択肢はない。

 ならば、せめて終わらせ方だけでも選ばせてほしい。

 できることなら、少しでも救いのある終わりを迎えさせてやりたい。

 この一連の事件に関わる、すべての人達のために。

「一つでいいのか?」

 立ち上がりながら、傑は詠斗に微笑みかけた。

「お前のわがままならいくつでも聞いてやるぞ?」

 その偽りのない笑みから視線をそらし、詠斗はくしゃりと髪を触った。