要するに、はっきり自分の意見を言えず他人に流されるイエスマンということか。たとえ嫌なことでも断り切れずに損をするタイプ。これが陰湿ないじめとなるとかなり厄介だ。抜け出すために借りられる仲間の手があればいいのだが。

「はー! なんか腹立ってきたわ、オレ」

 鼻の穴を広げ、巧は椅子に踏ん反り返った。

「オレだって死んだヤツのことなんか悪く言いたかねぇけどよ、やっぱ間違ってるよな、猪狩のやってたことって。あの草間が殺人犯だとはちょっと考えらんねぇけど、そんな理不尽な目に遭わされてきたんじゃあ殺したくなったって言われても同情しちまうよ」

 がしがしっと乱暴に頭を掻いた巧は、はあぁ、と大きく息を吐き出した。