一七七センチと長身の巧を座ったまま見上げると首が痛くなる。一六八センチの詠斗にとっては、立っていても巧を少し見上げなければならなかったのだけれど。

 何も答えずにいると、巧は詠斗のすぐ隣に腰を下ろし、重箱並みの特大弁当を広げ始めた。これをすべて平らげて横に太くならないというのは一体どういうわけなのだろう、と詠斗は毎度驚いてしまうのだった。

「あんまり萩谷をいじめてやるなよ」

 ぽん、とひとつ肩を叩いて詠斗の目を自分へと向けさせてから、巧は困ったように笑いながらそう言った。

「……誰が?」
「お前が」
「俺が? 紗友を?」
「おーい、無自覚かよ」

 声に出してまた笑って、巧は豪快に弁当をかき込んだ。早食いはデブの証って、テレビか何かで見た気がするのだが。それでいて抜群のスタイルを誇る巧の存在は、学園七不思議の一つに数えても良さそうだな、などと思いながら、詠斗は巧の食べっぷりに今日も感心してしまっていた。そもそも、この学校に七不思議なんて存在するのだろうか。少なくとも、詠斗は知らない。