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 あまり事件のことばかりを考えていると授業に遅れを取ってしまうので、ほどほどに考えを巡らせながらも午前中の授業をきっちりこなし、詠斗は弁当箱を片手にまっすぐ屋上へと向かった。

 昨日の雨で濡れたであろうベンチはすっかり乾いていて、いつものように腰を落ち着けることができた。

 弁当箱がからになるまで、美由紀の声は聴こえてこなかった。辺りを見回すも、当然その姿は見えない。

「……先輩?」

 立ち上がって呼び掛けてみるも、やはり声は返ってこない。

「先輩」

 嘘だろ、まさか――。