「……で、どうなんです? 先輩を襲ったの、こいつでした?」

 無理やり話を事件のことに持っていくと、『うーん』と美由紀のうなり声が降ってきた。

『やっぱり写真じゃわかりづらいですね。直接ご本人に会ってみないと』

「じゃあ、また明日改めてってことにしましょうか。この大雨の中、わざわざ神宮司を訪ねるのはさすがに嫌だし」

『私は構いませんよ? 濡れませんから』

「あ、やっぱり幽霊だと雨に打たれても濡れないんですね。……というか、そもそも先輩ってここか自宅か事件現場にしか現れることができないんでしたっけ」

『あなたについていくことができれば、どこへでも行ける気がします』

「できるようになったんですか?」

『試してみます? それじゃ、手始めにあなたのおうちのお部屋まで』

「ちょっ、やめてくださいよ! 俺の部屋に入っていいのは……っ」

 言いかけて、詠斗は咄嗟に口を噤《つぐ》んだ。ふふっ、と美由紀の笑い声が聴こえてくる。

『紗友ちゃんだけ、ですか?』

 図星丸出しの顔で俯くと、もう一度美由紀の笑い声が降ってきた。

『妬けちゃいますね』

 そう言った美由紀の真意を、詠斗はどう受け止めてよいのかわからなかった。