昼休み。

 生憎の雨で屋上へ出られない詠斗は、屋上へと続く扉の前の階段に腰かけ、やっぱりひとりで弁当をつついていた。

『寂しくないんですか?』

 唐突に降ってきたその声に、詠斗の手がぴたりと止まる。

「……なかなか慣れませんね、どうしてもびっくりしちゃいます」

 苦笑を浮かべながら詠斗は箸を弁当箱の上に置いた。

 音のある世界で生きていればこんな思いはしないのだろうが、如何せん三年も経てばその感覚を忘れてしまう。

 美由紀に話しかけられるたびに、心臓が大きく鼓動する。

 怖いと思うからなのか、嬉しいからなのか。