「疲労骨折?」

 はい、と愁いを帯びた色の声が返ってくる。

『少し前から痛みがあると言っていたのですけれど、病院で診てもらったら折れていたようで。キャプテンとして部を率いる立場の人間でしたし、試合に出られないとなれば今まで積み重ねてきたものがすべて無駄になってしまうと知子は思ったみたいで……。どこか思い悩んでいる様子だったので問い詰めてみると、そういった事情を抱えていたと言うわけです』

「なるほど。察するに、試合に強行出場しようとして怪我をしていることを部員に黙ったまま練習を続けていた松村さんを、あなたは止めようとした。それでケンカになった?」

『そのとおりです』

 美由紀が肩をすくめる姿が目に浮かぶ。
 確かに、こんな理由で友人が殺人の疑いをかけられたら黙ってはいられないだろう。兄が言っていたように、まさか警察も本気で松村知子を疑ってはいないと思うのだが。