「美亜、起きてる? 開けるよ?」
 
ふいにドアの外からお兄ちゃんの声が聞こえて、無理やり口の中のチョコを飲みこんだ。
お兄ちゃんが来ていたとは知らなかった。

「あ、うん。いいよ」
 
ドアを開けて入ってきたお兄ちゃんは、心配そうな顔で、
「美亜が寝こんでるって母さんからメールで聞いて、心配でバイト前に寄ってみた」
と言った。

「それに、ちょっと聞きたいことがあって」
 
続けてそう言うと、お兄ちゃんは私の部屋のごみ箱を見て固まった。

「おい、なんだ? このチョコレートの空き箱の山。四、五、六……七箱も」
「…………」
「お前ひとりで食ったのか?」
「……う、ん」
 
お兄ちゃんの語気の荒さにちょっとびっくりして、私は机に置いたままのチョコのケースを隠そうとして、逆に落としてしまう。