――バンッ!
 
むき出しのお腹を殴られた勢いで、壁に頭をぶつける音。
低くうめいた後、こらえきれず火が付いたかのように泣きわめく甲高い声。
この声は私だ。

小学生のお兄ちゃんが止めに入ってくれたけれど、一瞬で振り払われて同じようにタンスに頭をぶつける。
泣きすぎて視界がボロボロになっている中、大人の男の大きな手が私のシャツをたくし上げ、もう片方の手が再度振り上げられた。

顔はわからない。
わかるのは、その手に対するとてつもない恐怖。あの手の大きさと熱が怖い。

怖くてたまらない。
……怖いっ!



『もう大丈夫だからね。お父さんはここにはいないよ』
 
パッと場面が変わる。
さっきとは一変した、穏やかな空気。部屋も変わった。
今のアパートの部屋だ。
 
気付けば、お母さんが私の頭を優しく撫でてくれていた。
疲れた顔にも見えたけれど、安堵に満ちたその顔。
そしてお母さんは、『ごめんね、今までごめんね』と嗚咽をこらえながら私を抱きしめてくれた。