そっか、そういうこともあるんだ。
ウソツキさんは大人の男の人なんだし。
顔が全然ちがったから、お姉さんや妹さんでもないだろうし。
 
そう、あれは……あの人は“彼女”だ。彼女がいたんだ。
 
一階までおりきると、なぜか涙が出そうな感覚が戻ってきた。

私は、なんで、こんなにショックを受けているんだ。
なんで、こんなにウソツキさんから見放されたような気分になっているんだ。

彼のことは、全然知らないのに。
彼はただ、私の話を聞いて、チョコレートをくれていただけなのに。

なのに、なんで……。

「……っ」
 
自分でもよくわからない涙が出てきそうになるのを、ゴシゴシと目をこすってこらえ、ゆっくり家のほうへ歩きはじめる。