「はぁっ……」
 
走り疲れて足を歩みに変える。

「うっ」
 
すると、途端にまた涙が零れてきて、私は痛いくらいに目を擦った。

「うっ……うっ、ひっく」
 
メソメソしながら道を歩いているから、すれちがう人達が怪訝な顔で私を見る。

いつのまにかもう、あのマンションの前まで来ていた。
見あげると、屋上のフェンスが少し見える。
 
……ウソツキさん。

気付けばマンションの中に入り、エレベーターに乗りこんでいた。
いつもどおり五階を押し、廊下に出ると突き当たりの階段を一心に上る。
 
重い扉を開けると、いつものように強い風がびゅうっと私の髪を舞いあがらせた。
屋上には今朝まで降っていた雨の跡がところどころにあった。