「うわっ、びっくりした。一年? 泣いてんの? 大丈夫?」
 
通りかかった三年の男子が、崩れるように泣いている私に気付いて、手を差し伸べてきた。
 
手を……。

「ひゃっ!」
 
けれども、恐怖でのけぞってしまった私は、勢いよく立ちあがって反射的にカバンでその手を遮る。

「うわっ、あぶね! なにす……」
 
すごい速さでもう片方の靴を履き、校門へと走る。

親切心だと知りつつも、今はまともな対応ができない。
“なんで”と“嫌だ”と“どうしよう”と“怖い”。それらが頭の中をすごい勢いで飛び交い、パニックになって走ることしかできない。

「はぁっ、はぁっ」
 
大橋くんに言わなきゃよかった。
それよりなにより、最初から男友達なんて無理だったんだ、やっぱり。