放課後、帰り道。
「あっ、傘」
校舎から数分歩いたところで、ウソツキさんの傘も、朝に大橋くんから返してもらった私の傘も、教室前のロッカーに掛けたままだったということに気付いた。
少しためらったけれど、借り物は早めに返さなきゃいけないし失くしたら大変だ、と思い、校舎へと踵を返す。
教室のロッカーのところまで戻り、傘を二本手にした私は、「よし」と言ってまた歩き出した。
生徒達はみんな帰ったり部活に行ったりしたのだろう、放課後の教室や廊下は閑散としている。
けれども、廊下を階段のほうへ歩いていると、違うクラスの教室から話し声が聞こえてきた。
「……が……で……」
友達同士、残って話しているのかな。閉められたドアのわずかな隙間から聞こえる数人の男の子の声に、そう思って通りすぎようとした時。
「えっ、マジ?」
「俺も見た、お前が昨日、タネミアと帰ってるとこ」