黒くて大きめの傘を受け取り、私はぺこりと頭を下げる。
バスタオルもたたんでウソツキさんに返した。

「とりあえず、帰ったらすぐ風呂入れよ」
「はい」
「じゃーね」
「お邪魔しました」
 
中までお邪魔していないのにそう言って、開けたドアを閉める。
そして、エレベーターで一階におり、マンションの軒下で借りた傘を広げた。
 
雨で重くなっていた制服が、拭いたことで少し軽くなった気がする。
同時に、チョコのおかげか、私の心も軽くなったようだ。
 
よし、今夜、大橋くんにメールをしよう。
 
小さくガッツポーズをした私は、もう一度「うん」と頷き、家路を急いだ。
ウソツキさんの傘に当たる雨の音も、なんだか応援してくれているような音に聞こえた。