一気にポンッと顔が赤くなり、視線をそらす。

すると、ウソツキさんは、
「あー、初々し。初々しすぎてイラつく」
とぼやいた。

そして、玄関の棚に置いてあったチョコレートの箱を手に取り、ふたをスライドさせて私に取るように促す。

「はい。これで勇気でも出してくださいませ」
 
私は、ぶっきらぼうに「いただきます」と言ってひと粒手に取り、パクリと口に運んだ。
いつもの甘さが口に広がって、さっきまで泣きながら走っていたのがウソみたいな気分になった。

「傘、持っていけば?」
「いいんですか?」
「うん、いつでもいいから返してくれればいいよ。俺、毎日屋上にいるから」
「どうもありがとうございます」