私は、制服を拭く手を止めて視線を落とし、
「大橋くんに直接手を引っぱられて……咄嗟に逃げてきました」
と、正直に話した。

途端に、鼻から大きく息を吐くウソツキさん。

「ほら、言わんこっちゃない」
「ちがいます。車が通って水がかかりそうだったから、道路脇に寄せてくれただけで、事故みたいなもので……」
「ふーん。で? そのあと?」
 
段差があるし、いつもは座りながら話しているからだろうか、今日のウソツキさんはとても大きく感じられ、けっこうな圧迫感だ。
顔も怒ってるし、尋問されている感じがしてちょっと怖い。

「蕁麻疹が出たのと、気持ち悪がられるのが怖かったのでパニックになって、振り払って無我夢中で逃げてきました」
「うん」
「み……見られて、嫌われたかもしれない。もし見られてなくても、強く手を振り払ったから、傷つけちゃったかもしれない」