肩で息をしてたたずんだまま、さっき触れられた手のほうへ視線をゆっくりと移す。
制服の袖を震える手でたくしあげると、赤いまだら模様が肘の上まで続いていた。

雨が当たっても冷たさを感じない。
さっきに比べたらだいぶ引いている気はするけれど、それでもその部分は、強く熱をはらんでいた。
 
気持ち……悪……。

「うっ……」
 
自分で心の底からそう思うと、軽い吐き気をもよおした。
すぐさま袖を戻すと、涙がまた込みあげてくる。
雨と混ざったそのしずくを、私は反対の手の甲でぐしぐしとぬぐった。
 
目の前のマンションを見あげた私は、そのまま中に入って、エレベーターに乗りこむ。
ずぶ濡れで息も切れたまま五階へあがり、そして、いつものように屋上へ続く階段を上りはじめた。
 
なにをやっているんだろう。
屋上に行ったって、屋根がないんだから雨に打たれるだけなのに。
 
ポタポタと髪の毛の束から滴る雨水。
自分が情けなくなって、足が一層重たくなる。