「……っ」
 
嫌だ、どうしよう。
絶対、気持ち悪いって思われた。

それにあんな振り払い方をして、嫌な気分にさせてしまった。
どうしよう……どうしようっ!
 
繰りだす足が水しぶきをあげる。
土砂降りではないけれど、走っているせいで雨の粒が私の顔にパシパシ当たる。
 
みんなにとってはどうってことないことなのに、私だけ、なんでこんなに取り乱さなきゃならないんだろう。
なんでこんな体質なんだろう。
 
走りながら涙が出てくる。
 
全然ダメだ、私。
まだ、こんなことにさえ対処できない。
ダメだ、全然ダメなんだ。 
 


いつもの見慣れたエントランスの前で立ち止まる。
乱れた息。
濡れた前髪から粒になった雨水が、ひと筋頬を流れたのを感じた。