「あっ……ごめん。あぶなかったから、つい」
 
そう言いながら、私の顔を見た大橋くんは硬直した。

「だ、大丈夫? 種田さん、顔、真っ青だけど」
 
手……。
手、握られた。
直で……手を……。
 
そう思った瞬間、触れられたその部分に強い熱が走った気がした。
ジリジリとその熱がかゆみを伴い、腕をはうように上ってくる。
この感覚を、私は知っていた。

即座に握られたほうの手を見られないように後ろへ隠し、そのままあとずさる。

「ごめ、ごめん、な、さ……」
 
うまく言葉が出てこない。
手も声も震えている。
パニックだ。
 
蕁麻疹が……出た。
出てる、絶対。

見られた? 
あんな、気持ち悪いブツブツ、見……。

「あっ、種田さんっ」
 
私は落とした傘もそのままに、自分の家の方向へ走りだした。