肩までの長さの私の髪をひと束握り、遊ぶようにスルスルとばらしていく。
ウソツキさんはたまにこんなイタズラをするけれど、肌に直接触れるようなことは決してしない。

「夕陽に透けて、金髪みたいに光ってんね」
 
直にさわられていないのに、なぜかくすぐったい気持ちになり、私は「やっぱりセクハラです」と訴えた。

ウソツキさんはそんなのは無視して、クスクス笑いながら私の髪で遊び続ける。
 
ちょっとずつ陽が落ちるのが早くなりはじめてきた。
ベンチに座っているふたりの影も徐々に長くなっていく。鰯雲は下半分をオレンジ色に染めて、風も少し冷たさを含みだしてきた。
 
斜めに体を倒しながら座るウソツキさんのとなりで、私は、
「チョコ」
と、今日の分のチョコをねだる。

「はいはい」
 
なんだか本当に猫とエサやりお兄さんみたいだ、と思った。