「チョコ……」
「え?」
「チョコ、食べたいです。持ってるんですよね?」
 
うつむきながら、照れ隠しでそう言ってみる。

「はいはい、あーんして」
「え?」
 
そう言って、ウソツキさんは少し開けた口にぽいっとチョコを放り込む。

「あぐっ」
 
パーカーをかぶせられているせいで目隠しされているような私は、いきなりのことに驚いた。

「あぶっ、あぶないじゃないですか!」
 
パーカーを取り、チョコを口の中で片頬に押しやりながらわめく。

「ハッ、ネコがほしいって言ったんじゃん」
 
またもやからかってケラケラ笑っているウソツキさん。
私は頬を膨らませて怒るふりをしながら、モグモグと口を動かした。
 
甘くておいしい。
気のせいかもしれないけれど、やっぱりこのチョコを食べると不安なことが少しだけ軽減されるような気がする。

「はい、もう一個サービス。こっちはヒステリーを治す効能あり」
「うるさいです」
 
そんなこんなで、また三十分くらい、ウソツキさんとお話をして帰った。