「オオハシくんも年頃の男の子なんだから、隙をねらっては近付いてくるよ、絶対」
「そんなことっ」
「あるに決まってんじゃん、ネコのこと好きなんだから」
 
私は大きく反論に出られずに「……大丈夫だもん」と、うつむいて小声でつぶやく。
 
その時、頭の上にパサッとなにかが降ってきた。
ふわっと少しだけ柔軟剤だか香水だかのいい香りと、ほんのり煙草の匂い。

目の前が急に暗くなってなにも見えないけれど、これはウソツキさんが手に持っていたパーカーだとわかった。
着ていなかったはずなのに、なんとなく温かさを感じる。

「ま、大げさじゃなく、ちゃんと助言として頭に置いといてよ。主治医としては心配だから」
 
ポンポンと、布一枚を隔てて私の頭を軽く叩くように撫でるウソツキさん。
 
びっくりした。
でも、なんだろう、落ち着くこの感じ。
温かくて、くすぐったいような、変な感じ。
まだ数回しか会ったことのない人なのに、なんでこんなに心を許せるような気分になるんだろう。