「よしっ! 種田さんの男友達一番ゲット!」
 
大橋くんは無邪気な笑顔でガッツポーズをした。
本当に裏表がない人だな、と思った次の瞬間。

「よろしく。はい、握手」
 
制服のズボンで手をゴシゴシしてから、私に向かって右手を差しだしてきた大橋くん。
途端にビクッとして固まる私の体。
 
こんなに早くピンチを迎えるなんて思ってもいなかった。
心臓が早鐘を打ちはじめ、冷や汗がこめかみを伝う。
どうしよう、が頭の中を占領する。

「あ、さっき、おにぎり素手でさわっちゃったから……ごめん。ハハ、よろしく」
 
考えあぐねた結果、手は出さずに、ちょっと上擦った声でかろうじてそう答えた。
 
大橋くんは、
「ハ、ハハ」
と笑いながら、差しだした右手で短髪の頭を掻いた。
 
こうして、私に初めての男友達というものができた。