「ハハッ、威嚇して毛が逆立ったネコみたい」
 
ウソツキさんは、頭がボサボサになった私を指さし、ケタケタと笑った。

私より何歳上なのか知らないけれど、こんなに大人げない人いるんだ。
怒りもたしかにあるけれど、彼の予期せぬ行動と子どもっぽさに呆気にとられてしまう。

「帰ります。今日の話は内緒に……」
「ふ。誰に話せっての? 他人なのに」
「…………」

“他人”……。
 
その言葉を聞いて、少し親しみを感じはじめていた心の前に、一気に壁を作られたような気がした。
 
もう、いい。
もう帰ろう。

「じゃ、さようなら」
 
私はそう言ってその場をあとにした。

うしろで「また来てねー」と声が聞こえた。