「ごめん。そんな顔させたくて言ったんじゃないけど、たとえば、ネコに本当に好きな人ができるとするでしょ? そいつもネコのことが好きになって、両想いになったとする。でも、それでも諦めるってこと?」
「そういうことに、なりますね」
 
そう自分で答えながら、気持ちはどんどん沈んでいく。

そっか、私、諦めないといけないんだ。
これからずっと……。
 
ウソツキさんは小さく鼻で息を吐いて、ベンチの上に胡坐をかいた。

「なーんか、ヤな感じ」
「なんなんですか? 私は本気で悩んで」
「俺は当事者じゃないから、たしかにわかんねーよ? でも、治す努力もしないで、ただ過去のトラウマに囚われてるだけって、なんかもったいなくない?」
「だって、治るわけな……」
「治るよ」
 
スパッと、こともなげにウソツキさんは答えた。
私はその根拠のない自信に、目を見開く。