「なに? 座るんでしょ? はい」
 
ウソツキさんは起きあがった体をまっすぐに整えて、ベンチの端で足を組み、私のスペースをあける。

「あ、うん。どうも」
 
ウソツキさんの自然な感じに気おくれを感じるのも変な気がして、私はカバンを胸の前に持ちながら、すとんと反対側の端に腰をおろした。

「もう来ないのかと思ってた」
「え?」
「なんかこの前、おどかしちゃったから」
「あぁ……」
 
前回会った時のことを思い返す。
たしかに急に腕をつかまれて驚いたけれど、私の中ではそれ以上に話しやすくなったし、距離も縮まったような気がしていた。

だからだろうか、
「毎日来てるんですか? ここ」
と、普通に会話を膨らませる。

「そうね。だいたい、この時間に一時間くらい」
「なにしてるんですか?」
「ぼーっとして、空とか景色見てる」
「ふーん。ヒマなんですね」